リオオリンピックで金メダル1枚のみを獲得した国・地域まとめ
- どういう趣旨なの?
- 【7人制ラグビー】フィジー
- 【テコンドー男子68kg級】ヨルダン
- 【柔道女子52kg級】コソボ
- 【テニス女子シングルス】プエルトリコ
- 【競泳男子100mバタフライ】シンガポール
- 【男子ハンマー投げ】タジキスタン
- 頂点を極めるということ
どういう趣旨なの?
2016年リオデジャネイロ夏季五輪。
この記事を作成している時点で、いよいよ最終日となりました。
日本が獲得したメダルは金メダル12個・銀メダル8個・銅メダル21個の合計41個。これは過去最多の獲得個数となります。
2020年東京夏季五輪に向けて、すばらしい結果になったと言えそうですね。
で。
メダル獲得個数の詳細を見ていくと、下の方も気になってくるわけです。
特に金メダル1個・銀メダル0個・銅メダル0個なんて国もあるんですよ。
これって金メダリストの人、完全に英雄じゃないですか?
そんな英雄候補がどういう国に存在しているのか……。
気になったので、まとめてみました。
それぞれの競技にそれぞれのドラマあり。ぜひご堪能ください。
【7人制ラグビー】フィジー
準決勝で日本を下したフィジー。
国旗にはユニオンジャックが載っている通りにイギリス連邦の構成国ですが、実は歴史上で出たり入ったりしています。現在は入っている、所属している形になりますね。
そして、決勝の相手はまさしくイギリスでした。
スコアは43-7と見事な圧勝。文句なしの金メダルです。
なお、こんなニュースもありました。
85万人の国民を歓喜させ、国旗があちこちで翻る……。
太平洋の島国としてのアイデンティティより、今のフィジーたる存在意義に立ち返ったのかもしれません。
偉大なるセブンスの活躍が国さえも動かした。すごい事例ではないでしょうか。
【テコンドー男子68kg級】ヨルダン
テコンドー!?
思わず驚いてしまいましたが、徒手空拳で始められる競技としては、テコンドーは優秀なのかもしれません。
それだけに、「空手の五輪入り絶対阻止」の立場だったのかもしれませんね……まあ、歴史的背景もありそうですが。
ヨルダン・ハシミテ王国にとっては、これが初めてのオリンピックでのメダル獲得。それが金メダルなんですから、完璧としか言いようがありません。
偉業を達成したのはアフマド・アブ=ゴシュ選手。
母国では英雄として歓待されそうです。
【柔道女子52kg級】コソボ
セルビアから分離独立を宣言し、今なお全国家から承認された状態に置かれていないコソボ共和国。そういう経緯もあって、IOCへの加盟は2014年。今回が初めてのオリンピック参加となりました。
金メダルを獲得したのはマイリンダ・ケルメンディ選手。
日本でもドキュメンタリーが放送されるなど、戦前からの知名度は高かったですね。
また、この階級での世界ランキングは1位。
世界選手権では2度優勝、グランドスラム・パリでは3連覇中と、この52kg級の金メダル最有力候補でした。
とにかく勝ちに徹する柔道で、日本の中村美里選手を準決勝で下し、そのまま決勝も有効の差で勝利。一本で勝つ華麗な柔道は全く見せませんでしたが、それでも勝ちを重ねての優勝なわけですから、高い技術を感じさせました。
もちろんコソボにとって初めてのメダルであり、それも金メダルになります。
【テニス女子シングルス】プエルトリコ
まるで漫画のようじゃないか!
テニス女子シングルスで金メダルを獲得した22歳の彼女、モニカ・プイグの経歴を知れば、日本人なら誰でもそう思うでしょう。
世界ランキングは最新のもので35位。もちろんこのリオ五輪でもノーシード。
しかし、グランドスラム優勝経験のあるムグルッサやクビドバを倒すという快進撃。四大大会ではベスト8にもなったことのない少女が、ついには世界ランキング2位のケルバーまで退け、至高の金メダルを手にしたのです。
プエルトリコ自治連邦区にとって、オリンピックの金メダルは初めて。さらにプエルトリコの女子選手としては初めてのメダルということになりました。
アメリカのコモンウェルスということもあって、そちらに国籍変更して挑んだ例もあったので、プエルトリコに籍を置いたままの活躍はなかったわけですね。
経済破綻が現実のものとして進行中のプエルトリコ。このニュースは暗雲を打ち払い、未来へ進む光明となるのでしょうか。
【競泳男子100mバタフライ】シンガポール
偉大なるレジェンドを下しての金メダル。
先日のヘレン・マルーリスと吉田沙保里の美談のように、競泳男子100mバタフライの金メダリスト、ジョセフ・スクーリングにもそうした輝かしい逸話がありました。
彼が打ち倒した相手とは、オリンピック史上最多の金メダル23個を獲得した男、マイケル・フェルプスでした。報道で銀メダル3人同着の報道があったと思いますが、その時にオリンピック新記録・アジア新記録・シンガポール新記録を樹立して優勝したのが、スクーリングになります。
この記事によれば、まさしくマルーリスと吉田の関係そのもの。
記者からの無礼な質問を非難し、勝者たるスクーリングを称えるフェルプスもまた偉大なチャンピオンなのだと感じます。
上記の動画のように、母国での歓迎ぶりは盛大なもの。
シンガポール共和国史上初めてのオリンピック金メダリストですから、この扱いも当然ですね。
【男子ハンマー投げ】タジキスタン
タジキスタン共和国と聞いて、「あの旧ソ連のスタンがいっぱいあるところね……」となる人も、平成28年となった今は少ないのかもしれません。
そんなタジキスタンに初めての金メダルをもたらしたのが、男子ハンマー投げのこの選手、ディルショド・ナザロフなのです。
投擲距離78.68mは決して優れたものではありません。例えば前回の2012年ロンドンオリンピックでは、先日引退した室伏広治選手が78.48mで銀メダルでした。優勝選手が79.37mだったので、この場合は銀メダル相当ですね。
しかしながら、2008年北京オリンピックでは82.02m、81.61m、81.51mですから、とても及ばない記録ということになります。実際、ナザロフはアテネで予選敗退、北京で11位、ロンドンで10位に終わっていました。
ですが、力を発揮できる場所で発揮することが強者の条件。初めての南米開催という特異な条件下で見事な投擲を見せたのは、充分に金メダルにふさわしいでしょう。
頂点を極めるということ
いかがでしょうか。ご満足いただけましたか?
オリンピックはとかく論評の対象となります。拝金主義への堕落、巧妙なドーピング、本来の理念の形骸化……。
それでも、肉体を鍛えに鍛え上げたアスリートたちが、その力と技と人生のすべてをぶつけてくる姿は美しい。素直にそう思います。
4年後の2020年には東京でオリンピックが行われます。
予算の肥大化、既得権益による収奪、スポーツ予算の削減……こちらもいろいろと問題は山積していますが、決まったからにはやるのでしょう。
「今更オリンピックなんてやる意味ないよ」
私もそう思っていました。
しかし、こうして胸打たれてしまうと、そんなシニカルな気持ちが揺らいでしまいます。
ただ唯一、頂点を極めるために。
競技者たちは今日も自らを鍛えるのでしょう。
私という一個の人間もまた、その心に倣いたいと思います。
「スポーツを通じて相互理解と友好の精神を養い、平和でより良い世界の建設に貢献する」
これこそがオリンピズムの精神であり、人類がたどり着くべき頂点なのですから。