題
まあお聞き。
あらゆる創作には表題がつきまといます。こういうブログの記事もしかり、小説、論文、その他もろもろ……。
題名の印象というものは、作品の出来を大きく左右します。
さて、最近は長い題名が大きな潮流として存在しますね。
例えばブログのエントリ。「やぎろぐ」(八木仁平さん)の最新エントリを見ると、「【レビュー】『m+(エムピウ)』の財布ミッレフォッリエは、使う人のことを考えぬいた神財布だ」というのがありました。全部合わせて45文字。なかなかの長さ。
例えばライトノベル。一時ほどの長いタイトルは見られなくなりましたが、それでも新刊情報を見ると「最強をこじらせたレベルカンスト剣聖女ベアトリーチェの弱点」(鎌池和馬さん)なんてのが入っています。サブタイトルの「(2)その名は『ぶーぶー』」というのまで含めると、実に41文字。こちらも長いですね。
最強をこじらせたレベルカンスト剣聖女ベアトリーチェの弱点 (2) その名は『ぶーぶー』 (電撃文庫)
- 作者: 鎌池和馬,真早
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
- 発売日: 2016/07/09
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で。
そんなに長いタイトルが支配的なのは、いろんな理由があります。検索エンジンに見つけれられやすい。内容がどういうものかわかりやすい……。
しかし、逆に考えれば、短いタイトルが目立つ土壌があるということでは?
さらに敷衍するならば、小説的なタイトルをブログに持ち込むことで、新たなインパクトを与えることも可能なのでは?
今回は私が好きなタイトルの本などを紹介しつつ、表題というものについて考えてみましょう。
……前2つの記事が長くなりすぎたので、短めにね、短めに。
グッと来るタイトルの本
元が小説畑なので、紹介する本のタイトルには偏りがありますが。
一般小説
「そして粛清の扉を」は衝撃的なタイトルだと思うんですよ。
表題だけ見たら、「おっ、スターリンか?」とお思いになるかもしれませんが、どっこい現代をモチーフにしたフィクションです。
卒業式を翌日に控えた高校で、突如として発生した学校ジャック事件。武器を手に、生徒を人質にとったのは、普段は目立たない中年女性教諭だった。彼女の周到に練られた計画と驚くべき戦闘力は、対峙した警視庁捜査第1課の精鋭「特警班」さえをも翻弄する。焦燥し、混乱する警察、保護者を前に、一人また一人と犠牲者が…。第一回ホラーサスペンス大賞を受賞した衝撃の問題作。
紹介文がこれですよ。「学園ソドム」からエロを抜いて陰惨にした感じ。
- 作者: 貴志祐介,酒井和男
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2000/12/08
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字面のインパクトも含めると、「天使の囀り」も良いですね。私ゃこれで「さえずり」の漢字を知ったようなものです。
ハゲウアカリが怖くなる一冊。みんなもアマゾンに行く時は気をつけよう!
……カタカナでアマゾンって書いても、何気にどっちのアマゾンかわからんもんですね。
ある意味でタイトルの勝利だったのが「銃・病原菌・鉄」。
噂によれば「ソフィーの世界」並みに完読率が低いとか……。
皆さんの本棚にも眠ったままになってはいませんか?
短いタイトルで言えば、印象的なのはこの「檻」。
北方謙三らしいハードボイルドな作品。
この「檻」へのリスペクトを兼ねて、今回の記事タイトルを「題」一字にしてみました。
すごいぜ。検索に引っかかりそうにないぜ。
ライトノベル
スレイヤーズすぺしゃる13 仰げば鬱陶し<スレイヤーズすぺしゃる> (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 神坂一,あらいずみるい
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 富士見書房
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今や古典になった感のあるスレイヤーズ。その短編シリーズすぺしゃるの方。
単純に鮮烈なサブタイトルということで、「仰げば鬱陶し」は記憶に刻み込まれています。
ざるそば(かわいい)<ざるそば(かわいい)> (MF文庫J)
- 作者: つちせ八十八
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / メディアファクトリー
- 発売日: 2016/01/25
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最近のでインパクトといえば、やっぱりこれ。
ざるそばでかわいいって何なんだ……。
趣味嗜好が合わなくても、どんなストーリーなのかって気になりません?
エッセイ
自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと (Sanctuary books)
- 作者: 四角大輔
- 出版社/メーカー: サンクチュアリ出版
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このタイトルづけはすごくブログのエントリっぽいですよね。でも、気になっちゃう。とりわけ現代日本に息苦しさを感じている人にオススメ。20代と言わず、どんな年代からでも捨てることはできるでしょう。
坂口安吾の名著。
これまた古典の色彩が強いものではありますが、中身は実に鮮烈に私たちに語りかけてきてくれます。
堕落論や続堕落論のみならず、「FARCEに就て」などの名作が収められていますから、ぜひ一度読んでいただきたい。
一番印象的なのは、「今日は空襲がなくて寂しい」といった感想を口にする、戦時中の女性の言葉ですかね。そうしたエピソードも踏まえて、「堕ちよ」と説く坂口安吾の魂の筆跡――目撃して欲しいものです。
タイトルで大切なのは長さではなく、中身を期待させること
タイトルは長さによらず、どれだけ「中身」「内容」に期待を持たせられるかというのが大切ですね。
こうした観点から見ると、さすがに本記事のタイトルは間違ったのでは?
素直に「このタイトルは中身が気になる! おもしろタイトルの付け方教えます」とか煽るような手管を使った方が良かったのでは?
そんな気もしてきましたが、1字タイトルのインパクトを試してみたいという欲求に逆らい難かったため、このままで行かせていただきます。何でも試してみないと効果測定ができないからね、仕方ないね。
ともあれ、題名の影響力は大(Dai)ゆえに、こだわらないと記事の魅力が死(Die)んでしまいます。気をつけて参りましょう。
お後がよろしいようで。