スペシャルウィークが種牡馬を引退、思い出すのは1999年有馬記念
偉大な馬の2度目の引退
種牡馬引退か……。受胎率が下がってたんだな。お疲れ、あとは余生を楽しんでおくれ。
スペシャルウィークといったら、やはり1999年の有馬記念を語らぬわけにはいくまい。
しぶとく粘るツルマルツヨシ。
伸びてくる同年の皐月賞馬テイエムオペラオー。
メジロブライト、ナリタトップロード、ファレノプシス、ステイゴールド。
きらびやかなメンバーの中で最後に輝いたのは、やはりこの2頭。
グラスワンダーとスペシャルウィーク。その差はわずかに4センチ。首の上げ下げ。一瞬わずかの差。永遠となった差。
ああ。
たまらないものがある。
このレースは本当に泣けてくる。
スペシャルウィークのグラスワンダーのマークは完璧だった。それを承知で抜け出してきたグラスワンダーの脚も見事だった。
ウイニングランをした武豊を誰が責められよう。絶対に交わしたように見えた。
しかし、的場のグラスワンダーはほんの少しだけ、勝利の近くにいた。
勝負は次代へ!
いろいろ意見はあると思うが、現時点でのスペシャルウィーク及びグラスワンダーの後継種牡馬はこの2頭だろう。
スペシャルウィーク産駒とグラスワンダー産駒の対決ということで言えば、ブエナビスタvsアーネストリーなどもあったが……。
父系という意味ではこの2頭が中心になるはずだ。
初年度産駒から重賞馬キョウヘイを出し、あの超ハイレベルな新馬戦メンバーであることを示したリーチザクラウン。
モーリスという2000年代有数の怪物とグランプリホースたるゴールドアクターを輩出したスクリーンヒーロー。
特に、スクリーンヒーローは成り上がりがすごい。2010年度の種付け料は30万円から始まって、2017年度はとうとう700万円にまで高騰した。
リーチザクラウンも、決して評価が高いわけではなかろう。G1タイトルには手が届かなかった。その点ではジャパンC馬であるスクリーンヒーローよりも厳しい。
実際、種付け料は20万円だったようだ。
しかし、かつてのライバルの仔に負けじと、子孫たちがすばらしい走りをしてくれるかもしれない。勝ち上がり率もこの価格の馬としてはかなり良いようである。7歳までじりじりと現役を続けた馬が、こうも良い仔出しなんだから競馬はわからない……。
黒鹿毛は駆け抜けた
スペシャルウィークの退厩を見送ったレックススタッドの岡田牧雄社長は「馬は元気なのですが、受胎率があまりよくないので種牡馬を引退することになりました。以前から種牡馬を引退する際は面倒を見たいと生産者の日高大洋牧場様からいわれていたので、退厩することになりました。元気な状態でお返しすることができてよかったです」と別れを惜しんだ。
そうか、生まれ故郷に帰れるんだなぁ……。
彼の様子を見に行ってあげるのも良いかもしれない。もちろん、事前に牧場への問い合わせと、現場でのマナーの遵守徹底は当然のこととして。
G1タイトル。引退式。種牡馬として充分な成績。BMSとしてもエピファネイアなどで数字上昇。廃用されることなく種牡馬引退。余生へ。
競走馬としては考えられる最高のコースを歩みきった。この道を通りきれずに生を終える者たちが数多いる中で、堂々とゴールした。
さあ、あとはもう速く走る必要もない。酷な種付けノルマを課されることもない。
故郷の日高の空の下、どうかのんびり過ごしておくれ。